高嶺さおり、その道の入り口。了
「じゃあ早速着替えちゃいましょう! 私は外に出てますので!」
そうして、久しぶりに一人になった私。このスカート、上から履くか下から履くか問題に直面したりしながら、なんとか購入したブラウスとスカートに着替えます。
そして、ひと息ついて、ふと部屋の姿見に目がいきます。
直面します。衝撃の事実に。
私!! 全っ然!! カワイく!! ない!!
確かに女性ぽさは出てる。男性というより女性寄りに見える。服は文句なくカワイイ。でも!! 私!! カワイく!! ない!!
ショックでした。酷く落胆しました。プロのメイクさんでも私をカワイくは出来ないのか、と。
なお、そのときメイクさんに撮って頂いた写真たちがこちら。
ちょっと目が死んでると思います。だって落胆していますもの。うわぁ、この顔で外出てたんか。という後悔も追加しておきます。
「お疲れ様でした。気をつけて帰って下さいねー」
そう、問題はここからです。私、このまま帰らねばなりません。
やっぱりカワイくないんで着替えます。
とは、なんだか申し訳なくて言えず。結局マンションから出て歩き始めました。なるべく俯いて、顔を隠しながら。
どうしよう。どっかのトイレ借りて着替える? でもメイクがそのままだよ? やっぱり戻って落してもらう?
色々考えました。その末に、何故かは分かりませんが、もっと顔の隠れるウィッグを買うことにしました。幸い、名駅の近くにはウィッグ屋さんもありましたので。
お店に入るのもかなり躊躇われましたが、意を決して入店し、店員さんに事情を話しました。すると、店員さんがウィッグを見繕ってくれ、試着することになりました。
そのウィッグが、神でした。
ショートのボブに近いウィッグで、最初は、いやいやもっと顔を隠したいの私!と思ったのですが、一応被って見ると……。
アレ、カワイイ、かも?
(写真は店を出たあと帰りの電車内で撮ったものです)
髪型一つでこうも変わるのかと、衝撃でした。自分のカワイくなさに直面したときよりもすごい衝撃。髪は女の命と言いますが、納得です。
こうして、私の人生初の女装は、正に間一髪で一応の成功となったのでした……。
了
6話に分けてお送りしました、初女装体験。正直私、最後に神のウィッグに出会っていなければ、落胆したまま帰宅し、二度と女装をすることもなかったと思います。そんな風に、一度女装に失敗して、二度としないという人は、もしかしたら沢山おられるかもしれません。
しかし、それはあまりに勿体ないです! メイク、服、髪型、体型。どれか一つ損なうだけで、カワイイは簡単に遠ざかります。しかし逆に、そのどれかを少し変えるだけで、カワイイが急激に近づいて来ることもあるのです。自分の理想のカワイイを手に入れるのは、とても難しいです。でも、必ずどこかに、あなたがカワイくなれる組み合わせがある筈なのです。そのために、ダイエットやスキンケア、お化粧の練習など、努力が必要な場合もあるでしょう。
しましょう、努力。そして近づきましょう、カワイイに。まだまだ入り口ですが、私は進みます。このカワイイ道を。カワイイお洋服をカワイく着るために……。
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高嶺さおり、その道の入り口。⑤
目的地は、マンションから10分ばかり離れた近鉄パッセ。私の服の好みから、メイクさんが提案してくれました。
「さて、外出するときに絶対やっちゃいけないことがあります」
ピンクのハイヒールを履きかけている私に声がかかりました。
「ガニ股です」
ガニ股。
「どんなに顔が女性になっても、一発で怪しまれます。逆にちょっと内股を意識するだけで、一気に女性的に見えます。あとは姿勢ですね、背筋も出来るだけ伸ばしましょう」
普段、猫背でガニ股気味な自分には大事なアドバイスでした。
そして出発から5分。つま先が、痛い!
ヒールって踵が大変なイメージだったんですが、体重がかかるのでつま先が痛くなるのですよ……。内股も意識してるし、スカートはすーすーするしで、女の子は大変だなぁ、などと思ってしまいました。
なんとか目的地に到着すると、そこは楽園でした……。Ank RougeにSecret Honey、FintにLIZ LISA……。えぇ、私好みのカワイイお店がたくさん! 目移りが止まることを知らない!
「あの、ごめんね、時間が迫ってるのであまりじっくりは……」
そうでした、あまり長居はできないのでした。この中から最も心に響いて、かつ私が着れるお洋服を選ばないと!
店内を早歩きで物色。すると、気になるマネキンが一体。それはAnk Rougeさんの店頭。上はフリフリの白いブラウス。下は大人っぽい、でも独特なカタチの黒いマキシスカート。
「カワイイですねー、でも、スカートは入るけどブラウスが怪しいかな……」
そう感想を述べるメイクさん。ならばと勢いでスカートだけ購入! お向かいにあるSecret Honeyさんへ! 店員さんと相談しながらカワイくてサイズの合うブラウスを購入! 最後にオリエンタルトラフィックさんで、黒いローファーを購入!
よし、全身揃った!
というところで、メイクさんと共に早歩きで撤収。
さて、やっぱり足が痛くなりましたが、そんなの比じゃない問題が私を待ち受けていました……。
つづく
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高嶺さおり、その道の入り口。④
実はこのお化粧の時のこと、あまりよく覚えていません。今思うと本当に勿体ないんですが、殆どずっと目を閉じてしまっていたのです。
「では、ベースメイクをしていきますねー」
という声が聞こえて、クリーム状のものをスポンジ的なもので肌にトントンされ、その上にパウダーめいたものをパフパフされた感はある。というモヤっとした描写しか出来ません。後学のために、眼を皿にして見ておくべきだったと本当に後悔……。
「目の周り触っていきますねー」
ベースメイクの次はアイメイクでした。
……非常に恐ろしかったことしか覚えていません。
「目、開けててねー。上向いててねー。閉じちゃダメだからねー」
これ、お化粧慣れしている方や、コンタクトレンズを常用されている方ならば平気なのかもしれませんが、目を触る習慣のない私にとっては、かなりの鬼門です。瞼はぷるぷるしてしまうし、涙は出て来るしで、随分と時間を使ってしまいました。
「じゃあ付けまつげのっけるねー」
すごいです。目が一気に大きくなります。そして同時に、視界が一気に小さくなります。上1/3くらい、塞がれた感じになりました。
「じゃあ、チークとリップで終わりだからねー」
言葉どおり、ちょんちょんと両者をのせていただいて、メイクは終了しました。
そして、その状態でしっかりと鏡を見た感想。
顔、全然違う……! 肌が綺麗だし、目が大きいし、頬がピンクだし、ちょっと女の子っぽい気がする! これなら、出掛けられる……かな?
「じゃあ、ちょっと時間かかっちゃったので、ウィッグ付けたらそのままお出掛けしますねー」
……え、もうですか?
つづく
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高嶺さおり、その道の入り口。③
迎えて下さったのは、ごく普通の女性でした。
「始めまして、本日担当をさせていただくMです。先ずはコチラの用紙にご記入をお願いします」
そう言って渡された紙には、本日どんな風になりたいか、どういうプランにするかといった項目とともに、ある重要な事項を記入する欄がありました。
女の子としての名前です。
恥ずかしながら、全く考えていなかったのです。どうしようかと悩んで、頭に浮かんだのは、私が憧れている某アーティスト兼声優さんでした。ご存知の方は私の名前を見た時点でピンときたかと思います。畏れ多いとは思いつつも、他に思い付く訳でもなく……。誠に勝手ながら、お名前を一部お借りすることにしました。高嶺さおり、誕生です。
「では、次にお出掛け用にお貸しする衣装を選びましょう」
出てきたのは夢にまで見たカワイイお洋服たち……。私も含め女装さん、ガーリー、フェミニン、カワイイ系統の衣装をお好みの方が多いらしいです。私は、水色のスカートに白いフリフリブラウス、そしてグレーのカーディガンに着替えました。初めて着る女の子の服。嬉しいやら恥ずかしいやら、なんだか申し訳ないやら……、でもやっぱり嬉しい!
その後、洗顔をしてパックをして、いよいよお化粧の時間です。
つづく
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高嶺さおり、その道の入り口。②
女装、しよう。
そう決意してからは早かったです。ジョエルさんのブログで、名古屋には女装をさせてくれるメイク屋さんがいくつもあることを知った私は、その中のひとつ、龍の月さんに予約を入れることにしました。
この龍の月さん、お値段は比較的高めなのですが、コースがたくさんあって融通も利かせてくれ、かなり自分の都合に合わせられます。私の場合、何度かLINEでやりとりをしてプランを立てました。お化粧をして頂いて衣装を借り、そのままメイクさんとお洋服を買いに行き、そのお洋服で帰宅する。ただし当日の仕上がりがあまりに酷い場合、外出ナシで屋内撮影、化粧を落として帰る。ということになりました。また、当日着たい、買いたいお洋服のイメージついても尋ねられたので、フリルやリボンの付いた女の子らしいものを、と伝え、買い物をするお店も考えていただきました。
4月21日当日、ドキドキしながら電車に乗った私。カワイくなれなかったらどうしよう……。そうなれば、カワイイ服を着るという夢は叶いません。しかも、そうなる目算は高め。容姿に自信もないですし……。これほどドキドキしたのは大学入試のとき以来です。それからの私の人生を左右する、という意味でも、どちらもとっても大事な1日でした。
14時の予約で、12時過ぎに名古屋に着きました。本来ならお昼を食べるつもりでしたが、食欲が無くてパス。名古屋駅をぶらぶらします。
そこで気付きました。
人が多い。非常に多い。
でもコレ、私にとっては好都合でした。人が多すぎて、逆に人の目が気にならないんです。だって、誰も他人に注目してないもの。ちょっと、お出掛けのハードルが下がりましたね。
そうこうしている内に約束の時間となり、指定された場所に向かいました。そこは、名駅からしばらく歩いたところにある、ごく普通のマンションでした。
つづく
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高嶺さおり、その道の入り口。①
カワイイお洋服を見るのが好き。
それがきっと入り口だったのです。
フリルいっぱいのスカート、リボンが付いたワンピース。世の中には、カワイイお洋服が溢れています。
それらを眺めることが楽しくて仕方がない。
でも、男である自分はそんなカワイイ服を着れない。それどころかお店でじっくり見ることすら躊躇われる……。ネットで見てこっそり楽しむ日々が続いていました。
そんなある日、とうとう抑圧された欲望が破裂しました。
「私もカワイイ服が着たい!」
でも、男の自分が着てもカワイくない……。それはお洋服に申し訳ない。では、どうするか。
そう、カワイくなれば良いのです。
そう、女装です。
勿論、その結論が出るまでに随分な時間が掛かりました。結論が出てからは更に時間が掛かりました。
そもそも、自分が女装出来るのか? メイクはどうするのか? その状態で外に出れるのか?服は?靴は?髪は?
色々考えて、ネットで調べている内に、ある方のブログに辿り着きました。その方は名古屋で女装活動をしているジョエルさんという方で、ブログでは女装のイロハや日々の記録が、とても楽しそうに紹介されていました。
本当に、すごく楽しそうでした。
その姿に背中をおされ、私は女装をする事に決めたのです。
つづく
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高嶺さおり、女装はじめました。
平成31年4月21日、ひとりのオトコの娘が生まれました……。
はじめまして、高嶺さおりです。この度は私のブログを閲覧いただき、本当にありがとうございます。
標題のとおり、女装を始めました。それを機に、私のカワイイ道への挑戦の忘備録として、また、カワイイ道に挑む輩集めの一環として、このブログを始めさせて頂きました。
まだまだ歩き始めたばかりの私ですが、カワイイお洋服が似合うオトコの娘になれるよう、少しずつでも精進していきたいと思います。皆さん、どうかよろしくお願いします。
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